Theoretical Sociology

太郎丸博のブログです。研究ノートや雑感などを掲載しています。(このページは太郎丸が自主的に運営しています。京都大学の公式ページではありません。)
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Weberの階級分析における「搾取」的状況
Erik Olin Wright, 2002, "The Shadow of Exploitation in Weber's Class Analysis," American Sociological Review, 67:832-53.

太郎丸ゼミ(20050207)
報告:小浜 雅史


 Weberの階級分析の特徴のひとつに、搾取という概念が見当たらないことがあげられる。Marxの場合は、階級について扱う際に搾取問題に端を発する概念の構築を特徴とする一方で、Weberはライフ・チャンスの問題をもとにして階級概念について論じている。このことを考慮すると、Weberが搾取についての問題を無視してきたというのではなく、むしろ彼の視座はMarxと同じく、資本主義における所有関係の本質と雇用者が直面する問題との密接なつながりにあったのである。ただ、Weberはこの種の問題を搾取という概念を用いて理論化したり、労働力の絞り取られていく状況を階級関係の顕著な特質としなかったのであった。彼はこのような問題を資本主義の経済関係の合理性と現実との緊張関係から生じる技術的な非効率性の一例として捉えていたのであった。  


Weberの業績における階級分析の位置
 彼の一連の業績のなかで、階級は周辺的な問題に過ぎない。というのも、 峽从僂伴匆顱廚鬚澆討盂級についてあまり理論化しておらず、また古代社会の奴隷制にかんする論考などの代表されるWeberの初期の著作ではMarxの焼き直しのためWeber社会学全体のなかで階級分析におけるインパクトが希薄であり、さらにWeberの関心事は社会秩序としてある資本主義の起源・発達・その派生的問題についての分析にある、からである。とはいえ、彼の著作「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」では、単に資本主義が世界のダイナミックな力となったということだけではなく、様々な階級に属する人々の指向性のなかに資本主義の精神が刻み込まれてると示されることから、資本主義社会における階級についての問題は、彼にとっては無関係ではないのである。  「経済と社会」のなかで、Weberは階級と身分と政党との区別を、社会的相互作用の領域とそれぞれが主観的アイデンティティや集合行動をひきおこすか否かという点から、行っている(表1)。

 (表1) 「経済と社会」におけるWeberの階級概念の位置

 

 

物理的財

主観的アイデンティティ

集合行動

階級

経済的領域

×

×

身分

コミュナルな領域

×

政党

政治的領域





 このようにWeberは階級と身分との違いを共通のアイデンティティの有無として捉えているが、行為者の動機といった側面が両者の違いと必ずしもいえないと筆者はみている。むしろ、両者には生活の物理的・象徴的状況における不平等を形成するメカニズムに根本的な違いがあるとみなすのである。表2は階級概念と(Weber社会学において重要なテーマとなる)社会的関係の合理化との関係を、社会的権力の資源と社会的関係の合理化の度合いからみたものである。それによると階級は、物理的資源を獲得し用いる手段を統制する高い合理性をそなえもつ社会的関係といえる。

(表2) Weberの合理化に関する分析からみた階級概念の位置

社会的権力の資源

合理的な社会関係

非合理的な社会関係

社会的名誉

実力者の威信

習律的な身分団体

生活の物理的状況

階級

消費団体

権威

官僚制

世襲制





WeberとMarxの階級概念の共通点
・ 階級概念は、ヒエラルキーによる計量的な等級づけではなく、社会的行為者間の相互作用の中から生まれるものである、とみている点。
・ 資産の所有は資本主義における階級分化の根源であるとしている点。
⇒Marxにとっては、階級は生産手段との関係のなかで定義されている。Weberは、労働者にとって市場の相互作用は社会的関係の抑圧的構造を隠蔽した現実と考えている。つまり、資産をもたない労働者が生産手段から分離させられ、資本家へ従順になるように至るともみることができ、これはMarxにも共通する。
・ 階級を、客観的に定義された身分と組織化された社会的行為者という集合と区別している点。 ⇒それぞれの使い方は異なるが、Weberは身分という点から記述する際に「階級的状況」という表現をし、一方Marxは「即時的階級」という表現をする。また、集団という点からでは、Weberは「階級を意識した組織」と表現し、一方Marxは「対峙的階級」という表現をする。両者の用語の表現は異なるが、基本的な考えは類似している。それは構造上定義づけられた階級には、組織化された闘争の形態をうむ傾向をもっており、この両者を概念上区別する必要があったからである。
・ 物理的利害を階級の状況が社会的行為に影響を与えるメカニズムに中枢と捉えている点。
⇒つまり、両者は所有関係により定義された階級の立場が物理的利害に影響を与え、その物理的利害が実際の行動に表面化すると捉えているのである。
・ 階級と身分との関係性について類似の見解をもつ点。
⇒例えば、身分団体が資本主義市場の妨げとなるという見解、身分団体が階級形成にとってかわるアイデンティティ基盤をつくるとするもの、そして資本主義市場が身分団体のもつ影響力を侵食している、という考えが共通しているが、両者とも資本主義により身分団体は衰退し階級が顕著になると考えている。


WeberとMarxの階級概念の決定的な差異
 両者の違いは、階級にかんする所有関係と関わる因果メカニズムにみられる。つまりWeberにとっては、階級により合理的な経済的相互作用(とりわけ市場)のなかで人々のライフ・チャンスがどのように決定づけられているかというのが問題となり、一方Marxにとっては階級によりライフ・チャンスと搾取とがどのように決定されているのかにあるのだ。
 Weberは、市場での合理的な交換をもとにして(互酬的関係)、様々な経済的資源を得ることが人々に経済的なチャンスや不利益をもたらし、ひいてはそれが人々の物理的利害を形成するような状況をライフ・チャンスとみてこれが階級をうむものとした。
 Marxの階級概念においても、ライフ・チャンスは重要性をもつがそれと同じくらい重要なものとして搾取のプロセスがあることに注目している。ライフ・チャンスと搾取の両者が物理的な不平等をつくっていると彼はみていたのである。搾取とは、資本主義のなかで生産をもとにした労働者と資本家との相互作用的関係(監視・支配・従順)において労働者が作り上げた剰余労働を資本化が専有することを意味している。  


Weberにみる搾取的状況
 確かにWeberは搾取の点から階級について論じてはいないが、Marx同様に労働の搾取的状況は描いている。それが労働の動機と経済の技術的効率性の問題である。かれは、「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」のなかで、技術的な問題の解決するためには、労働を最大限度にしようとするプロテスタントたちの天職倫理にもとづく一連の態度を労働者が身につけることによってのみ可能であることをいう。
 労働についての中心的問題は、合理化の限界にある。労働者が自らの職務を専有していても所有者が労働による産物を専有していると、技術的合理性は労働を制限しようとするもの・伝統・慣習・契約によって阻まれる。生産というなかで労働者の行う労働を技術的にもっとも効率的なものとするには、労働者を生産手段から引き離すだけでなく労働者の職務・労働プロセスへのあらゆる制御装置をなくす必要がある。Weberにとってはこのような労働の専有は階級関係の問題というよりむしろ経済体制における合理性の程度と形態の問題であったといえる。    


副次的問題
 ここで筆者は二つの問題についてみている。まずひとつは、階級概念と搾取とを結びつけることで階級闘争への理解にどのような変化をもたらすのか、ということである。これについて筆者は、搾取概念によって、階級闘争は単に利益分配のことをさし示すようになるのではなく、搾取する階級が搾取される階級に依存している状況が描き出されるようになり、そしてまたこのような依存的状況があるため搾取される階級の側に搾取に抵抗する力を持ち階級関係を有機的なものにさせる状況が描き出される、という。
 そして二つ目は、搾取がある特定の規範的関係を伴ってどのように階級分析を導入しているか、ということである。これについて、WeberもMarxも階級間の物理的利害と結びついた規範的関係をもとにして階級分析を行っているが、Weberの場合は、とりわけ技術的効率性と合理化に焦点があり、経済的合理性の問題である労働をもとにして階級分析が導入されており、一方Marxの場合には、労働者の利害を中心にして階級分析がなされているといえる。

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