Theoretical Sociology

太郎丸博のブログです。研究ノートや雑感などを掲載しています。(このページは太郎丸が自主的に運営しています。京都大学の公式ページではありません。)
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ある社会的地位から見える景色:教育的地位と職業ハイアラーキーの構築

Freda B. Lynn and George Ellerbach, 2017, "A Position with a View: Educational Status and the Construction of the Occupational Hierarchy," American Sociological Review, Vol.82 No.1, pp.32-58.
私が職業評定パターンと呼んでいたものが学歴によってどう異なるのか分析した論文。社会階層論では、職業間に上下関係を想定することが多い(安田三郎のようにこれを拒否する人も若干いる)が、職業を序列づける基準は、収入、権力、必要なスキルレベル、のようにいくつか考えられ、何を基準にするかによって職業間の序列は変わってくる。そこで、基準は明示せずに、一般の人々に職業の地位の高さを評価してもらい、その平均値で職業をランキングすることがある。この個々の職業に対する人々の評価の平均値を職業威信スコアという。職業威信スコアは医者や裁判官のように必要な知識の水準が高く、習得に時間がかかる(しかも誰でも習得できるわけではない)ものほど高い傾向があり、多くの先進諸国であまり大きな違いがないことが知られている。とはいえ、すべての人が同じように職業を評定しているのかといえば、そういうわけでもなく、個人差がある。こういった個人差が評定者の学歴によってある程度生じている、というのが Lynn and Ellerbach の主張である。

それでは、評定者の学歴によってどのように職業評定が異なるのか。Lynn and Ellerbach は四つの仮説を提示している。第一に、高学歴者のほうが低学歴者よりも、職業評定の均質性が高い。なぜなら、高学歴者は大学のような高等教育機関で社会化されることで専門的知識やアカデミックなスキルの重要性を認識するようになるが、低学歴者ほどこのような社会化を受けないため、職業に対する評価が個性的なまま(つまりバラバラ)であるからだという。このような均質性/多様性は、職業評定間のマンハッタン距離で操作化されている。すなわち、個人 i (i = 1, 2, ..., N) の職業 j (j = 1, 2, ..., M) にたいする評価を xij とすると、個人 i の職業評定パターンは

であると私は定義している。個人 i と個人 k の職業評定パターン間のマンハッタン距離は
である。これを高学歴者どうしで計算した場合と低学歴者どうしで計算した場合では、高学歴者のほうが距離が近い(つまり、職業評定パターンが類似している)というのが第一の仮説である。

第二の仮説は、高学歴者のほうが上記のような教育訓練の必要な職種とそうでない職種の評価を明確に区別する (segregate)、というものである。すでに述べたように高学歴者は専門知識を高く評価し、そのような知識を身につけるため、長期の教育訓練を必要とする職業(高知識職とここでは便宜的に呼んでおく)も、高く評価しやすい。それゆえ、低学歴者よりも高学歴者のほうが高知識職と低知識職の評価を明確に区別する、という理屈である。評定者 i が両者をどの程度「明確に区別」しているかは、以下のように測定されている。評定対象となっている高知識職の数を a, 低知識職の数を b 、i が低知識職と高知識職に同じ評価を与えている組み合わせの数を c とすると、

をカテゴリー間密度と定義している。このカテゴリー間密度が小さい値を取るほど低知識職と高知識職は明確に区別されていると操作化されている。例えば個人 i が以下のように「あ」〜「こ」の 10 種類の職業に 1〜5 の五段階で評価しているとしよう。「あ」〜「え」の4つは高知識職、「お」〜「こ」の6つは低知識職であるとする。
高知識職 低知識職
5 5 4 3 4 3 3 2 1 1

5 と評価されているのは高知識職だけであるし、1, 2 と評価されているのは低知識職だけであるが、3, 4 は低知識職も高知識職も両方ふくまれている。低知識職と高知識職が同じ評価を受けている組み合わせの数は、c = 1×1 + 1×2 = 3 とおりであるから、カテゴリー間密度 = 3 / (4×6) = 0.125 である。

上記の二つの仮説が正しければ、とうぜん高知識職に対する平均評定と低知識職に対する平均評定の差は、高学歴の評定者ほど大きくなる傾向があるだろう。これは第三の仮説として定式化されている。

第四の仮説は、個人 i の評定の分散の大きさに関するものである。個人 i が高学歴者の場合、高知識職についての知識を多く持っているので、高知識職内の差異に詳しいだろう。それゆえ高知識職間の評価に差をつける、つまり、高知識職内分散が大きくなるはずである。いっぽう低知識職についてはあまり良く知らないので、差異は小さくなり、低知識職内分散は小さくなるだろう。逆に低学歴者は高知識職内分散が小さく、低知識職内分散は大きくなるだろう。これは Fararo Kosaka Model (FK Model) が想定しているのと同じ心理的メカニズムである。

1989 年の GSS データを使って 40 の職業に対する 9 段階の評定を分析の対象としている。低知識職と高知識職の区別は、その仕事で一人前になるために必要な教育訓練期間(DOT (Dictionary of Occupational Title) から来ていると推測されるが詳細は不明)の長さを元に分類しているが、どこで区切るかを一意に決めることは不可能である。そこで、90パーセンタイルや 50パーセンタイルなど区切り位置を変えて何度も分析しているようだが、どこで区切っても同じ結果が得られると言う。分析の結果 1〜3 番目の仮説は支持されたが、4番目は支持されなかった。ただし、1番目の仮説の検証は記述統計が示されているだけで、推定や検定がなされていない点には留意が必要だろう。4番目の仮説に関しては、単純に高学歴者ほど評価のバラツキが小さいという結果で FK Model 的な結果は観察されていない。

類似の分析はすでに Zhou (2005) によってなされているのだが、この論文は Zhou (2005) とは評価のバラツキを測定する指標が違っていて多角的に調べられている。また低学歴者と高学歴者の違いを社会化の効果とみなしており、おおむね説得的な結果が得られている。ただ議論がどんどん認知科学的な方向に進んでいっているので、 Zhou (2005) のほうが社会学的で私の好みにはあう。また、理論レベルでは、「象徴的境界」とか「カテゴリ化」といった概念が頻出するのだが、データの測定レベルでは、対象者に職業を分類してもらっているというよりは、9段階で評価してもらっているだけなので、理論が大げさな割に分析であまり役に立っていないのが残念な点である。言い換えれば、理論レベルでは職業評価とはカテゴリカルなものであると想定されているが、データのレベルでは連続的(量的)なものとして測定されているので、どうしても分析が恣意的な感じになってしまうのである(例えば職業を無理やり低知識職と高知識職に分類するなど)。とはいえ、こういった均質性やバラツキを積極的に主題にする研究はおもしろいと思っていて、可能性は感じるのである。

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