Theoretical Sociology

太郎丸博のブログです。研究ノートや雑感などを掲載しています。(このページは太郎丸が自主的に運営しています。京都大学の公式ページではありません。)
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Hakim 2010 「エロティック資本」

Catherine Hakim, 2010, "Erotic Capital," European Sociological Review, Vol.26 No.5, pp.499-518.
ハキムがエロティック資本に関する自説を開陳した論文。エロティック資本の定義は明示されていないが、以下の 6つ(場合によっては 7つ)の要素からなるという。
  1. 美しさ beauty。顔が主に想定されているようだが、身体のその他の部分も含む
  2. 性的魅力 sexual attractiveness。これは美しさとは明確に区別され、立ち居振る舞いに宿るという。美しさが写真で表現できるものであるのに対して、性的魅力は動画でなければ表現できないそうであるが、それ以上の理論的・経験的区別はなされていない。
  3. 愛嬌、魔力、人々に好かれる能力 grace, charm, ..., the ability to make people like you。エロティック資本の社会的な側面であるという。
  4. 活気、すなわち、健康、社会的エネルギーと上機嫌であることの融合 liveliness, a mixture of physical fitness, social energy, and good humour。ダンスやスポーツの能力に表れることが多いという。
  5. 服装、化粧、香水、ジュエリー、その他の装飾品 adornment、髪形、アクセサリ
  6. 性的能力、エネルギー、エロティックな想像力、遊び心 sexual competence, energy, erotic imagination, playfulness そしてパートナーを性的に満足させるすべて
  7. 多産性 fertility。これは女性のみに限定され、必ずしもすべての時代や文化にあてはまるわけでもないので、留保がつけられている。
エロティック資本は、文化資本や経済資本、社会関係資本とは異なるものであることが強調されているが、文化資本と重なる部分もあることはハキムも認めている。また、他の形態の資本と組み合わされることで、エロティック資本は大きな力を発揮するという。例として外交官の妻が美しく魅力的で社交的である場合、夫の大きな助けとなることがあげられている。この例からもわかるように、ハキムによれば、女性のほうが男性よりも多くのエロティック資本をもち、感情労働がしばしば女性の役割であるのも、女性がエロティック資本を多く持つからであり、それに見合った賃金が支払われないならば、エロティック資本の収奪ということになる。

エロティック資本の多くはトレーニングや社会化によって高めることが可能であり、遺伝などの影響をハキムは否定しないが、後天的な可変性のほうが強調されている(女性のエロティック資本が高いのも女性の努力と学習の賜物)。今日、人々のエロティックなものに対する需要はますます高まっており、エロティック資本の重要性はかつてないほど高まっているという(が、経験的な証拠は薄弱)。とうぜんエロティック資本を多く持つ者のほうが、恋愛市場や結婚市場で有利であり、結婚後も配偶者とのあいだの交渉力が強く、労働市場においても有利であるという。

男性研究者もフェミニストもエロティック資本の価値を否定、ないしは無視し、せっかく女性が優位に立てる資本の価値を切り下げようとしている、とハキムは批判する。彼女によれば、このようなエロティック資本の働きと価値を認めるべきであり、ミスコン批判や風俗産業の取り締まりにも批判的な論調である。

以下感想。自説は new theory だと何度か言っているが、new といえるほど新しくもない。パーツになる議論は、すでに知られているものか、トンデモくさい議論で、俗説ではふつうに言われていることのように思う。おもしろいのは、上記のような 6つの要素をエロティック資本という一つの傘の下にまとめたというところだろうか。erotic という形容が適切かどうかはともかく、容姿や愛嬌、活気、ファッション、魅力といった要素は、社会的評価とも関係している可能性が十分あり、部分的には人的資本や文化資本ともかさなる。顔の美しさや体形が賃金に影響することは米国ではほぼ確認済みであり、西ヨーロッパでもチラホラそういう論文が出ている。

わざわざ「資本」というアナロジーを用いるならば、自己増殖し self-enforcing、他の資源(例えばお金や人脈)の獲得を容易にするような性質を持っている必要があると思うが、お金や人脈を得やすいというのはあるかもしれない。自己増殖性や文化資本の獲得については怪しいが、文化資本も自己増殖するかどうかははっきりしないので、この点でエロティック資本だけを批判するのはフェアではあるまい。測定の困難さも問題の一つであるが、ハキムが自己弁護しているように、文化資本などのその他の資本も測定が困難な点では大差ない。

脱工業化が進み、対人サービス、私たちの専門用語でいえば、ノンマニュアル職の比率が高まることで、よく知らない他人から好感を持たれる必要のある人の数は増えていると考えられる。エロティックという用語を使う気はあまりないのだが、そういう見た目や好感度のようなものをとらえる工夫はもっとなされてもよいと思う。

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