Theoretical Sociology

太郎丸博のブログです。研究ノートや雑感などを掲載しています。(このページは太郎丸が自主的に運営しています。京都大学の公式ページではありません。)
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「党派的な脳:耳障りな科学のメッセージはどのようにリベラルと保守を科学不信にするか」Nisbet et al. 2015

Erik C. Nisbet, Kathryn E. Cooper and R. Kelly Garrett, 2015, "The Partisan Brain: How Dissonant Science Messages Lead Conservatives and Liberals to (Dis)Trust Science," The ANNALS of the American Academy of Political and Social Science, Vol.658 No.1, pp.36-66.
科学の政治化についてのより一般的なメカニズムを検証した論文。米国では保守派の科学不信が共和党政権下での科学関連予算の削減にまでつながっており、研究者の関心をひいている。

保守派が科学と対立する原因を説明する仮説はいろいろあるが、ここでは本質説 (intrinsic thesis) と文脈説 (contextual thesis) にわけて論じられている。本質説とは保守が本質的に科学と相いれない性質を持っているから、保守派は科学と対立しているという説である。例えば保守派はリベラルよりも頭が悪いので科学をちゃんと理解できず、それで対立する、といった説や、保守派は「伝統」や現状維持を好むのに対し、科学は常に新しい発見、知識の増大、進歩を求めるため、両者は相いれない、といった仮説が考えられる。いっっぽう文脈説とは保守が科学と対立するのはそのような文脈に保守が置かれているからであって、時代や状況が異なれば、リベラルが科学と対立するような文脈に置かれる可能性もある、という前提に立つ説である。

本気で保守はバカだと主張している心理学者もいて笑ってしまうのだが(どの程度確かな説なのかは知りません)、少なくとも科学の政治化の原因とは考えにくい。近年の米国のデータでは科学知識を統制しても保守のほうが科学者共同体に対する不信感が強い一方、1990年以前では保守とリベラルの差はほとんどないからである。とうぜん著者たちも文脈説を支持しており、保守が科学と対立するようになったのは、保守にとって耳障りな (dissonant) 科学者の主張(例えば進化論や地球温暖化)が保守の人々の耳に多く届くようになったから、というのが Nisbet, Cooper, and Carrett の主張ということになる。

この論文で検証されているのは、自身の政治イデオロギーにとって不都合な科学的主張を聞くと、科学に対する否定的な感情 (negative affective experience) と科学に対して反論したいという気持ち (motivated resistance to persuasion) が高まり、それらが科学者共同体に対する不信につながる、という仮説である。データはネットでおこなった要因配置調査実験 (factorial survey experiment) からえたもので、いわゆるヴィネット調査のデータである。要因配置は 3種類あり、事前に

  1. 保守にとって耳障りな科学者の主張(人間の進化と地球温暖化)を読んでもらう場合、
  2. リベラルにとって耳障りな科学者の主張(水圧破砕 (hydraulic fracturing), 原子力発電)を読んでもらう場合、
  3. 保守にもリベラルにも特に耳障りでない科学者の主張(惑星間の関係、プレートテクトニクス説)を読んでもらう場合、
がある。水圧破砕については今回初めて知ったのだが、天然ガス等の採掘に用いられる技術で、米国ではシェールガスの採掘でも用いられており、これが環境破壊や健康被害につながるのではないかと、懸念する人たちもいるようである。確認していないが、その人たちがリベラルということなのだろう。

被検者は、これら3種類のヴィネットのいずれかを読んだ後に、科学に対する否定的感情、科学に対して反論したい気持ち、科学者共同体をどの程度信頼するか、を尋ねられる。もちろん保革自己認知や科学に対する知識などもたずねられている。

分析の結果はほぼ仮説通りで、保守が保守にとって耳障りな主張を聞くと、科学に対する否定的感情、反論したい気持ち、科学者共同体への不信が増すのと同じように、リベラルもリベラルにとって耳障りな主張を聞くと、科学に対して ...(中略)... 不信が増す。とうぜんだが科学的知識があるほどこのような不信の増大は緩和される、という結果であった。

違和感ない結果であるが、日本では保守が地球温暖化を否定するというふうにならないのはなんでなんだろう、とあらためて思った。保守が企業の経済活動への規制をきらうのは日本でも基本的には同じはずなのだが、日本企業は「地球にやさしい」技術を売り物にしているからなのだろうか。それとも日本企業は米国にくらべて規制慣れしていて、抵抗感が少ないのだろうか。

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