Theoretical Sociology

太郎丸博のブログです。研究ノートや雑感などを掲載しています。(このページは太郎丸が自主的に運営しています。京都大学の公式ページではありません。)
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直下の和書の英語版です。審査を通過するためにレフェリーのコメントに従って若干修正してあります。
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「とにかく奴らは信頼できない:科学と科学者への信頼尺度の開発」Nadelson et al. 2018

Louis Nadelson, Cheryl Jorcyk, Dazhi Yang, Mary Jarratt Smith, Sam Matson, Ken Cornell and Virginia Husting, 2014, "I Just Don't Trust Them: The Development and Validation of an Assessment Instrument to Measure Trust in Science and Scientists," School Science and Mathematics, Vol.114 No.2, pp.76-86.
科学信頼尺度を初めて開発しました、という論文。科学に対する態度の尺度としては General Social Survey や World Values Survey で用いられているものが、比較的よく知られていると思うが、あれで本当にうまく科学に対する肯定的態度が測れているのかどうかは不明である。そこで、以下の 21 項目からなる科学・科学者信頼尺度を著者たちは作ったという。質問は、以下の言明に対する賛否を五段階で尋ねるものである。末尾の数値は学生調査の結果えられた item total correlations (個々の質問項目とその他の項目の総和の相関係数)。
  1. 科学者がこれまでの自分の主張を変えるならば、科学者の言ったり書いたりすることへの私の信頼は低下するだろう。.42
  2. 科学者は自分の主張と矛盾するような証拠は無視する。 .52
  3. 科学理論はあまりあてにならない。 .54
  4. 科学者はわざと研究成果の一部を秘密にしている。 .42
  5. 科学者は自分にとって不都合な発見をしても、それを広く公開している。 .37
  6. 科学者はほかの人のアイディアを評価しない。 .48
  7. 科学者の研究成果は人々の生活をよくするために役立っている。 .41
  8. 科学者は素人が自分の研究成果を理解できなくてもよいと思っている。.36
  9. 私たちは科学者の研究成果を信頼すべきだ。 .47
  10. 私たちは科学者が誠実に研究に取り組んでいると信じるべきだ。 .45
  11. 私たちは科学者が倫理的に正しく研究に取り組んでいると信じるべきだ。 .34
  12. 科学理論は信頼に値する。 .48
  13. 科学者が考える仮説はあてずっぽうにすぎない。 .37
  14. 科学をよく理解できる人ほど科学を信頼する。 .37
  15. 科学は自然現象を説明する答えを見つけられる。 .42
  16. 科学は私たちが直面する技術的な問題を解決できる。.36
  17. 科学者はモノの見方が偏っているので信頼できない。.63
  18. 科学者たちは自分たちが間違いを犯しても互いにかばいあう。.40
  19. 科学者は自身の考えに反する考えをまじめに検討したりしない。.57
  20. 今日の科学者は研究の発展のためならほかの人の幸せを犠牲にするだろう。.46
  21. 科学の発展は遅すぎるので、信頼できない。 .52
クロンバックのアルファ = .86 。保革自己認知や信心深さ、理系の単位取得科目数とも予測通りの相関を示している。質問項目は、科学者の誠実性、科学のパフォーマンスのよさ、科学の社会に対する貢献、の 3種類にわけることができようか。

信頼概念の検討が分析の前になされているが、それが質問項目の考案にどう関係しているのかよくわからないところが多かった。ただ、domain-general な尺度を作ったほうがいいという議論はなんとなく同意はできた。domain-general の意味もいまひとつよくわからなかったのだが、科学知識や科学という制度を信頼することと、科学者を信頼することは必ずしも同義ではないし、物理学を信頼することと社会学を信頼することも分けて考えることが可能だ。さらに科学制度を論文審査のシステムと真偽や一般性を評価するシステム、等々に分けて考える事もできようし、社会学を理論社会学と経験社会学に分けて、理論社会学は信頼できるが、経験社会学は信頼できない、と思っている人もいるだろう。このような細かい区分はいくらでもできるし、科学者や科学に詳しい人々ならばこれらを区別して異なる評価を下すかもしれない。しかし、一般の人々がこれらを明確に区別しているとは考えにくく、漠然とした科学・科学者にたいするイメージしかないと考えたよいと思われる。だから、こういう聞き方で悪くない、ということである。

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