Theoretical Sociology

太郎丸博のブログです。研究ノートや雑感などを掲載しています。(このページは太郎丸が自主的に運営しています。京都大学の公式ページではありません。)
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「科学信頼の二つの次元:学歴、科学的方法への信頼、科学制度への信頼」Achterberg, et al. 2014

Peter Achterberg, Willem de Koster and Jeroen van der Waal, 2017, "A science confidence gap: Education, trust in scientific methods, and trust in scientific institutions in the United States, 2014," Public Understanding of Science, Vol.26 No.6, pp.704-720.
科学的方法への信頼と科学制度への信頼を区別したうえで、それらへの学歴の効果を検討した論文。「科学への信頼」といっても様々な側面に分類して考えることができる。例えば、「物理学への信頼」「経済学への信頼」といった個別の分野への信頼は、個人内でもばらつく(例えば、物理学は信頼するが経済学は信頼しない、といった人は存在する)だろうし、科学的知識そのものは信頼するが、個々の科学者は必ずしも信頼できない(データのねつ造や犯罪に手を染める科学者もいる)、という人もいるだろう。この論文では、科学的方法への信頼と科学制度への信頼が区別されている。つまり、実験や調査、論理にもとづく科学的推論の方法は肯定するが、大学や学会、査読システムは腐敗している(あるいはその逆)とみなすことは可能である。

このような科学的方法と科学制度への信頼のギャップ(以下では信頼ギャップと略称)が存在し、それは学歴と関連していると Achterberg, de Koster, and van der Waal は主張する。具体的には、後期近代仮説(再帰的近代化という語が用いられているが、あまり再帰性は重要ではないのでここでは後期近代と意訳してある)とアノミー仮説の二つが検証されている。

後期近代仮説によれば、低学歴者よりも高学歴者のほうが信頼ギャップが大きくなる。高学歴者は豊富な知識と高い認知能力によって、科学的な方法の妥当性を吟味し、その正しさを理解することができる一方で、だからといって科学制度が正常に機能しているかどうかは別の問題だと、区別して考えることができるという。それゆえ、後期近代社会のさまざまなリスクに十分に対応できていない科学制度には批判的になるという。また後期近代では、文化的にアヴァンギャルドで、道徳的に相対主義的な価値観が強まるが、それは高学歴者に顕著である。こういった態度は既存の社会制度への批判的な視点につながり、科学制度もまたその批判の俎上に上ることになるという。低学歴者については説明がないが、低学歴者は漠然と科学的方法と科学制度をまとめて否定したり、受け入れたりしているということになろう。

いっぽうアノミー仮説によれば、アノミーに陥っている人は科学的方法を信頼する一方で科学制度は信頼しない。アノミーとはここでは自身が現代の社会・文化的な秩序から脅かされ、きまぐれで予測不可能、無秩序で無意味な世界に生きている感覚、と定義されている。疎外 (alienation) と呼んだほうが私にはしっくりくるが、いずれにせよ科学制度もアノミーに陥っている人から見れば、無意味でそれでいていつ自分の生活を脅かすかわからない存在の一部であろうから、信頼できないのは当然ということになる。このようなアノミーに陥った人は、秩序を希求する。科学的方法はそのような秩序をあたえる原理・原則の一つとして肯定的にとらえられ、信頼される、と Achterberg たちは言う。低学歴者のほうがアノミーに陥りやすいのは先行研究でも繰り返し確認されているそうなので、低学歴者のほうが科学信頼ギャップが大きくなると予測される。高学歴者については説明がないが、低学歴者ほどアノミーに陥っていないので、科学制度への信頼が相対的に高く、科学的方法についても特に否定する理由もないので、それなりに信頼するはずだ、という予測になろうか。

2014年の米国の全国データを使ってこれらの仮説を検証している。有効サンプルは 1798〜1984(モデルによって異なる)。年齢は 18歳以上で上限は不明。分析の結果、アノミー仮説のほうが支持され、後期近代仮説の予測に反する分析結果が得られている。つまり、科学制度は高学歴者のほうが低学歴者よりも信頼しているが、科学的方法への信頼は学歴による差は見られない。また媒介変数としてのアノミーの効果も検討されているが、予測通り低学歴者のほうがアノミーで、アノミーであるほど科学制度への信頼は低下し、科学的方法への信頼は高まる。後期近代仮説の予測では、知識の豊かさや後期近代的価値は、科学制度への信頼を低めるはずだが、逆に高めるという結果になっている。

科学的方法への信頼が一つの質問項目だけで測定されているのが気になるが、結果はおもしろい。疎外感が科学への不信につながるという示唆は私たちの研究からも得られており、アノミーやアパシーのたぐいは科学信頼と関連するのかもしれない。

おまけ。上のような構成概念がどのような質問項目で測定されたのかメモしておく。まず科学制度信頼。

  • 「科学制度一般」への信頼の程度
  • 「科学者」への信頼の程度
  • 「つきつめれば、科学的知識も単なる意見に過ぎない」という言明への賛否
(上記はいずれも11点尺度)の3つの回答(11択)を加算した値が、科学制度への信頼の尺度である。科学的方法への信頼は
  • 「正しい知識は、公正で体系的な研究 (unbiased and systematic research) によってしかえられない」
という言明への賛否で測定されている。このような分かれ方をする主成分分析の結果が示されている。

アノミーに対応する質問項目はすべて11点尺度で以下の言明への賛否をたずねている。

  1. 役人は庶民には無関心なので、役所に困ったこと相談をしてもほとんど無駄だ。
  2. 今日、人は誰に頼ったらいいのかわからない
  3. 現代社会では、人は今日を生きることに必死で明日のことなどかまっている余裕はない
  4. 将来何が起こるかわからないこの世界で子供を産み育てることは正しいこととは言いがたい。、
  5. 現在でも何か価値のあるものなどあるのだろうかとときどき考えざるを得ない。

知識の豊かさと後期近代的価値の質問項目群は省略するが、知識を問う質問は高校の現代社会か,中学の公民の問題に近い。後期近代の価値は個人の自由、自己表出主義 (self-expressionism) に関するものが全 7問中 6問で、イングルハートなら自己表出主義と呼ぶようなものである。

さらにおまけ。小田 (2001, p.7) にあったアノミー尺度の抜粋は以下の通り。

  1. 一般庶民のことを真剣に考えている役人 は少ない
  2. 政治家や知識人が立派なことを言っても、 本当に国民のことを考えているとは思え ない
  3. 今の世の中は人のことなど考えていたら 損ばかりする
  4. 今日が楽しければよく、明日は明日の風 が吹く
  5. 今の世の中何が正しく何が間違ってるの かわからない
  6. 豊かな社会と言うが人々の生活は良くな っていない
  7. 親しい間柄といっても、いざとなったら 信頼できない
  8. 他人のために苦労するのは実にバカらし いことだ
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