Theoretical Sociology

太郎丸博のブログです。研究ノートや雑感などを掲載しています。(このページは太郎丸が自主的に運営しています。京都大学の公式ページではありません。)
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私が好きなのと同じくらいあなたも私が好き?青年期友人関係の相互性が成績に及ぼす影響 Vaquera and Kao 2008

Elizabeth Vaquera and Grace Kao, 2008, "Do You like Me As Much As I like You? Friendship Reciprocity and Its Effects on School Outcomes among Adolescents," Social Science Research, Vol.37 No.1, pp.55-72.
友人関係の相互性 (reciprocity) の規定要因と、それらが学校への帰属意識と GPA (Grade Point Average) に及ぼす影響を検討した論文。

Aさんが Bさんのことを友人だと思っているからといって、BさんもAさんのことを友人だと思っているとは限らない。しかし、お互いに友人だと思っている場合、友人関係の相互性 (friendship reciprocity) が成り立っている、とこの論文では呼ぶことにしている。友人関係の相互性がどの程度成立しており、どのような要因によって左右されるのか、ということについては、単純に好奇心がそそられる。また、先行研究では親友や安定した交友関係の存在が、子供の社会的、認知的、感情的成長 (development)によい効果を及ぼすとされているそうであるが、とうぜん相互性があるほうが関係が親密で安定すると言われているので、友人関係の相互性は子供の成長にプラスに働く、ということが考えられる。

具体的には以下のような7つの仮説が提示されている。

  1. 社会経済的地位の高い家庭の子供のほうが相互的な友人関係を得やすい。なぜならそのような子供ほど最新のガジェットを持ち、ファッショナブルな服を着て、いい車に乗っているので、人気があり、相互的な友人関係を得やすいと考えられる。
  2. 移民一世である子供よりも、国内で生まれた子供のほうが相互的な友人関係を持ちやすい。なぜなら、移民の家族は様々な困難に直面しやすいため、その子は友人と遊ぶ時間が相対的に少なく、家族の手伝いなどに時間をとられやすいから。
  3. 女子のほうが男子よりも相互的な友人関係を持ちやすい。先行研究では女子のほうが相互に排他的で親密な関係を持ちやすいと言われており、それが相互性につながると予測されている。一説によれば男子は自分がホンモノの男であることを仲間集団で証明してみせる (prove the masculinity and preserve their integrity) 必要があるため、友人に依存したり、弱みを見せることをいやがることが、親密な関係を阻害しているという。
  4. 白人のほうが黒人、ヒスパニック、アジア系よりも相互的な関係を持ちやすい。この仮説に反するような先行研究も紹介されているが、けっきょくなぜこのような仮説が正しいと予測できるのか、ちゃんと説明されていない。
  5. 異なる人種のあいだでは相互的な友人関係は生まれにくい。これは文化の違いによってすれ違いが生まれたり、外集団の成員(他の人種の友人)と親密な関係を維持し続けることが、内集団(自分の属する人種のグループ)での規範に反するからである、といった説明がされている。
  6. 相互的な友人関係を持つ子供ほど学校への帰属意識が高い。なぜかは説明されていない。
  7. 相互的な友人関係を持つ子供は、学校への帰属意識の高さによって、高い学業成 (GPA で測定)をえやすい。この説明として友人が学校に関連するさまざまな情報を与えてくれるから、とあるが、それは帰属意識を媒介する必要はないので、説明としてはおかしい。

データは the National Longitudinal Study of Adolescent Health の 1994-1995 の中1から高3までの生徒で、学校をサンプリングして生徒全員に調査しているので、友人関係が相互的かどうか分かるらしい。以下では、回答者が友人として選んだ同じ学校に通う生徒のうち、リストに最初に現れた同性の友人を親友 (best friend) と呼び、この親友がこの回答者を友人のリストに挙げていれば、この回答者の親友との関係は相互的である、と操作的に定義されている。異性の友人が排除されているのは、恋人も友人のリストにあげるようにこの調査では指示されている上に、先行研究ではロマンティックな要素のない異性の友人は 5% と推定されているからである。

これらの生徒のうち 64% が親友からも友人に選ばれており、相互的な関係を持っている。関連する諸要因を統制して分析すると、白人のほうが相互的という仮説以外はいちおう支持されている。ただ効果は非常に小さく、従属変数をせいぜい数パーセント上昇させる程度である。友人関係が相互的であると、学校への帰属意識は 0.03〜0.06 程度上がるという予測なのだが、学校への帰属意識は 1〜5 の値をとるので、レンジの 1〜2% の効果でしか無い。GPA (0〜4の値をとる)への直接効果は 0.08、帰属意識を媒介する効果は大きく見積もっても 0.06×0.2 = 0.012 しかない。直接効果はどれもいちおう有意にはなっているが、サンプル・サイズが3万前後あるので(モデルによって異なる)、有意になって当たり前、という気はする。

ごく小さな効果であれば確認できた、という結果は常識的にも是認できる(大きな効果が確認されたらビックリである)。気になるのは、仮説の説明で相互性と親密さが互換的に用いられている点である。親密さの指標として相互性を用いるのは悪くないと思うのだが、そのような論調ではなく、相互性という観点を先行研究は見落としてきたと批判している。しかし、理論的には相互性と親密性は区別されていないので、けっきょく親密さが重要なのではないか、という解釈は否定しにくいだろう。とはいえ、友人関係の相互性という素朴な論点を突き詰めて分析した点は評価できよう。

以下はテクニカルな論点。学校のような小集団の構成員を全員サンプルとする場合、誤差相関の問題が生じる懸念がある。回答者の親友もまた回答者である場合、友人関係の相互性という変数が独立に分布しているとは思えないが、私がデータの構造を誤解しているのかもしれない。また、友人は最大で5人までえらべるので、同性に限ってもかなりの友人に関する情報を捨ててしまっている。すべての情報を使った場合、相互性が成立する確率はもっと下がるだろう。

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